1970年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第67回ワールドシリーズ(だい67かいワールドシリーズ、67th World Series)は、10月10日から15日にかけて計5試合が開催された。その結果、ボルチモア・オリオールズ(アメリカンリーグ)がシンシナティ・レッズ(ナショナルリーグ)を4勝1敗で下し、4年ぶり2回目の優勝を果たした。
両チームの対戦はシリーズ史上初めて。レギュラーシーズンで100勝以上を挙げた球団どうしがワールドシリーズで対戦するのは、2年連続7回目である[3]。レッズの本拠地球場リバーフロント・スタジアムは人工芝を採用しており、今シリーズ第1戦は人工芝の上で行われたシリーズ史上初の試合となった[4]。オリオールズの三塁手ブルックス・ロビンソンは、記者から人工芝での守備について訊かれ「俺はメジャーリーグの三塁手だぞ。やれと言われれば駐車場でも試合をするし、打球も止めてやるよ」と答えた[5]。今シリーズを通じてB・ロビンソンは好守を続け、レッズ監督スパーキー・アンダーソンに「ブルックスが夢にまで出てくるようになった。紙皿を落としても、あいつはワンバウンドで拾って俺をアウトにするんだ」と言わしめた[3]。さらにB・ロビンソンは、打撃でも5試合で打率.429・2本塁打・6打点・OPS 1.238という成績を残し、シリーズMVPに選出された。
また今シリーズでは、エメット・アシュフォードがアフリカ系アメリカ人の審判員として史上初のシリーズ出場を果たした[6]。所属するアメリカンリーグは審判員の定年を55歳に設定しており、アシュフォードは1969年11月にその年齢に達していたが、MLBデビューが51歳と遅かったことから、リーグ会長ジョー・クローニンが特例として任期の1年延長を認めていた[7]。今シリーズ終了後にアシュフォードが引退すると、アメリカンリーグにおけるアフリカ系アメリカ人の審判員は、1993年にチャック・メリウェザーがデビューするまで20年以上不在となる[8]。
試合結果
1970年のワールドシリーズは10月10日に開幕し、途中に移動日を挟んで6日間で5試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 | 試合 | ビジター球団(先攻) | スコア | ホーム球団(後攻) | 開催球場 |
10月10日(土) | 第1戦 | ボルチモア・オリオールズ | 4-3 | シンシナティ・レッズ | リバーフロント・スタジアム | |
10月11日(日) | 第2戦 | ボルチモア・オリオールズ | 6-5 | シンシナティ・レッズ |
10月12日(月) | | 移動日 | |
10月13日(火) | 第3戦 | シンシナティ・レッズ | 3-9 | ボルチモア・オリオールズ | メモリアル・スタジアム |
10月14日(水) | 第4戦 | シンシナティ・レッズ | 6-5 | ボルチモア・オリオールズ |
10月15日(木) | 第5戦 | シンシナティ・レッズ | 3-9 | ボルチモア・オリオールズ |
優勝:ボルチモア・オリオールズ(4勝1敗 / 4年ぶり2度目) |
第1戦 10月10日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
ジャクソン5による試合前のアメリカ合衆国国歌『星条旗』合唱(1分42秒) |
4回表、ブーグ・パウエルの2点本塁打でオリオールズが1点差に追い上げる(58秒) |
6回裏、先頭打者リー・メイの三塁線へのゴロを三塁手ブルックス・ロビンソンが逆シングルで捕球してアウトに(34秒) |
その後一死一・三塁から、トミー・ヘルムズの投前への打球で三塁走者バーニー・カーボが生還を狙うも得点ならず(1分35秒) |
7回裏、B・ロビンソンのソロ本塁打でオリオールズが勝ち越し(49秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ボルチモア・オリオールズ | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 7 | 2 |
シンシナティ・レッズ | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 0 |
- 勝:ジム・パーマー(1勝) 敗:ゲイリー・ノーラン(1敗) S:ピート・リッカート(1S)
- 本塁打
BAL:ブーグ・パウエル1号2ラン、エルロッド・ヘンドリックス1号ソロ、ブルックス・ロビンソン1号ソロ
CIN:リー・メイ1号2ラン - 審判
[球審]ケン・バークハート(NL)
[塁審]一塁: レッド・フラハーティ(AL)、二塁: トニー・ベンゾン(NL)、三塁: ボブ・スチュワート(AL)
[外審]左翼: ビル・ウィリアムズ(NL)、右翼: エメット・アシュフォード(AL) - 昼間試合 試合時間: 2時間24分 観客: 5万1531人
詳細: Baseball-Reference.com
第2戦 10月11日
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ボルチモア・オリオールズ | 0 | 0 | 0 | 1 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 10 | 2 |
シンシナティ・レッズ | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 7 | 0 |
- 勝:トム・フィーバス(1勝) 敗:ミルト・ウィルコックス(1敗) S:ディック・ホール(1S)
- 本塁打
BAL:ブーグ・パウエル2号ソロ
CIN:ボビー・トーラン1号ソロ、ジョニー・ベンチ1号ソロ - 審判
[球審]レッド・フラハーティ(AL)
[塁審]一塁: トニー・ベンゾン(NL)、二塁: ボブ・スチュワート(AL)、三塁: ビル・ウィリアムズ(NL)
[外審]左翼: エメット・アシュフォード(AL)、右翼: ケン・バークハート(NL) - 昼間試合 試合時間: 2時間26分 観客: 5万1531人
詳細: Baseball-Reference.com
第3戦 10月13日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
3回裏、フランク・ロビンソンのソロ本塁打でオリオールズが2点差に突き放す(43秒) |
6回裏、オリオールズの先発投手デーブ・マクナリーが打席で満塁本塁打を放ち自らを援護(1分4秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
シンシナティ・レッズ | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 | 9 | 0 |
ボルチモア・オリオールズ | 2 | 0 | 1 | 0 | 1 | 4 | 1 | 0 | X | 9 | 10 | 1 |
- 勝:デーブ・マクナリー(1勝) 敗:トニー・クロニンガー(1敗)
- 本塁打
BAL:フランク・ロビンソン1号ソロ、ドン・ビュフォード1号ソロ、デーブ・マクナリー1号満塁 - 審判
[球審]トニー・ベンゾン(NL)
[塁審]一塁: ボブ・スチュワート(AL)、二塁: ビル・ウィリアムズ(NL)、三塁: エメット・アシュフォード(AL)
[外審]左翼: ケン・バークハート(NL)、右翼: レッド・フラハーティ(AL) - 昼間試合 試合時間: 2時間9分 観客: 5万1773人
詳細: Baseball-Reference.com
第4戦 10月14日
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
シンシナティ・レッズ | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 6 | 8 | 3 |
ボルチモア・オリオールズ | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 8 | 0 |
- 勝:クレイ・キャロル(1勝) 敗:エディ・ワット(1敗)
- 本塁打
CIN:ピート・ローズ1号ソロ、リー・メイ2号3ラン
BAL:ブルックス・ロビンソン2号ソロ - 審判
[球審]ボブ・スチュワート(AL)
[塁審]一塁: ビル・ウィリアムズ(NL)、二塁: エメット・アシュフォード(AL)、三塁: ケン・バークハート(NL)
[外審]左翼: レッド・フラハーティ(AL)、右翼: トニー・ベンゾン(NL) - 昼間試合 試合時間: 2時間26分 観客: 5万3007人
詳細: Baseball-Reference.com
第5戦 10月15日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
オリオールズが3点を追う初回裏、フランク・ロビンソンの2点本塁打で反撃(34秒) |
ポール・ブレアーが2回裏の勝ち越し適時打を含む3安打を放つ(1分2秒) |
3回裏、マーブ・レッテンマンドの適時打でオリオールズが2点差に突き放す(1分4秒) |
5回裏、レッテンマンドのソロ本塁打でオリオールズのリードが4点に広がる(54秒) |
9回表、マイク・クェイヤーが代打パット・コラレスを三ゴロに打ち取り試合終了、オリオールズの優勝が決定(1分37秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
シンシナティ・レッズ | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 6 | 0 |
ボルチモア・オリオールズ | 2 | 2 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | X | 9 | 15 | 0 |
- 勝:マイク・クェイヤー(1勝) 敗:ジム・メリット(1敗)
- 本塁打
BAL:フランク・ロビンソン2号2ラン、マーブ・レッテンマンド1号ソロ - 審判
[球審]ビル・ウィリアムズ(NL)
[塁審]一塁: エメット・アシュフォード(AL)、二塁: ケン・バークハート(NL)、三塁: レッド・フラハーティ(AL)
[外審]左翼: トニー・ベンゾン(NL)、右翼: ボブ・スチュワート(AL) - 昼間試合 試合時間: 2時間35分 観客: 4万5341人
詳細: Baseball-Reference.com
脚注
- ^ "World Series Television Ratings," Baseball Almanac. 2019年10月19日閲覧。
- ^ a b Matt Kelly and Manny Randhawa, "Astros-Dodgers joins 100-win Series history / For 8th time, Fall Classic features pair of teams that hit century mark," MLB.com, October 22, 2017. 2019年10月19日閲覧。
- ^ Joseph Durso; Special to The New York Times, "UMPIRE DISPUTED," The New York Times, October 11, 1970. 2019年10月19日閲覧。
- ^ Roch Kubatko, "Seeing Reds this weekend (plus notes and Reds lineup)," MASNsports.com, June 24, 2011. 2019年10月19日閲覧。
- ^ "Dave Roberts guides Dodgers to first World Series in 29 years," Richmond Free Press, October 27, 2017. 2019年10月19日閲覧。
- ^ Alex Coffey, "Emmett Ashford Blazed Trail for Umpire Diversity," Baseball Hall of Fame. 2019年10月19日閲覧。
- ^ Baxter Holmes, "BALLOT INITIATIVE," Los Angeles Times, July 26, 2009. 2019年10月19日閲覧。
外部リンク
- MLB.com Postseason History(英語)
- Baseball Almanac(英語)
- Baseball-Reference.com(英語)
- 1970 World Series - IMDb(英語)
- 動画共有サイト "YouTube" にMLB公式アカウントが投稿した試合映像
- 第5戦:1970 World Series, Game 5: Reds @ Orioles
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カテゴリ |
ボルチモア・オリオールズ 1970年のワールドシリーズ ロースター |
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ボルチモア・オリオールズ |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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オリオールズ球団殿堂 | |
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ワールドシリーズ優勝(3回) | |
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ワールドシリーズ敗退(4回) | |
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リーグ優勝(7回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | - ノーフォーク・タイズ(AAA級)
- ボウイ・ベイソックス(AA級)
- アバディーン・アイアンバーズ(High-A級)
- デルマーバ・ショアバーズ(Low-A級)
- フロリダ・コンプレックスリーグ・オリオールズ(Rookie級)
- ドミニカン・サマーリーグ・オリオールズ(Rookie級)
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シンシナティ・レッズ |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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永久欠番 | |
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レッズ球団殿堂 | |
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ワールドシリーズ優勝(5回) | |
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ワールドシリーズ敗退(4回) | |
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リーグ優勝(9回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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