自説経

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自説経[1](じせつきょう、: Udānaウダーナ)とは、パーリ仏典経蔵小部の第3経。文字通り、釈迦が問答形式ではなく感興に催されて自発的に発した言葉を集めたもの[2]

以下の8品で構成される。

  1. 菩提品(Bodhi-vagga)
  2. ムチャリンダ王品(Mucalinda-vagga)
  3. ナンダ品(Nanda-vagga)
  4. メーギヤ品(Meghiya-vagga)
  5. ソーナ品(Soṇa-vagga)
  6. 生盲品(Jaccandha-vagga)
  7. 小品(Cūla-vagga)
  8. パータリ村人品(Pāṭaligāmiya-vagga)

サンスクリット経典として継承されている『ウダーナヴァルガ』(Udānavarga)は、本経と『法句経』を足したもの[2]

生盲品

群盲象を評す」も参照

釈迦は舎衛城に滞在中、そこで様々な沙門バラモンらの哲学的見解(ディッティ)を耳にした。

Santeke samaṇabrāhmaṇā evaṃvādino evaṃdiṭṭhino 'sassato loko idameva saccaṃ moghamañña'nti.
Santi paneke samaṇabrāhmanā evaṃvādino evaṃdiṭṭhino 'asassato loko idameva saccaṃ moghamañña'nti.
Santeke samaṇabrāhmaṇā evaṃvādino evaṃdiṭṭhino 'antavā loko idameva saccaṃ moghamañña'nti.
Santi paneke samaṇabrāhmanā evaṃvādino evaṃdiṭṭhino ' anantavā loko idameva saccaṃ moghamañña'nti
Santeke samaṇabrāhmaṇā evaṃvādino evaṃdiṭṭhino ' taṃ jīvaṃ taṃ sarīraṃ idameva sacacaṃ moghamañña'nti.
Santi paneke samaṇabrāhmaṇā evaṃvādino evaṃdiṭṭhino 'aññaṃ jīvaṃ aññaṃ sarīraṃ idameva saccaṃ moghamañña'nti.

ある沙門バラモンたちは、このような見解を主張する。「世界は永続的である、これのみが真理であり、他は虚妄である」と。
またある沙門バラモンたちは、このような見解を主張する。「世界は永続的ではない、これのみが真理であり、他は虚妄である」と。
ある沙門バラモンたちは、このような見解を主張する。「世界は有限である、これのみが真理であり、他は虚妄である」と。
またある沙門バラモンたちは、このような見解を主張する。「世界は無限である、これのみが真理であり、他は虚妄である」と。
ある沙門バラモンたちは、このような見解を主張する。「魂と身体は同一である、これのみが真理であり、他は虚妄である」と。
またある沙門バラモンたちは、このような見解を主張する。「魂と身体は同一はない、これのみが真理であり、他は虚妄である」と。

パーリ仏典, 自説経 生盲品 54.Paṭhamanānātitthiyasuttaṃ, Sri Lanka Tripitaka Project
群盲象を評す

過去において、とある舎衛城の王が生まれながらの盲人を集め、象を触らせた。彼らは口々にこう評したのであった。

  • 象の頭を触った盲人は、「象とは瓶のようなものである」。
  • 象の耳を触った盲人は、「象とは蓑のようなものである」。
  • 象の牙を触った盲人は、「象とは杭のようなものである」。
  • 象の鼻を触った盲人は、「象とは鋤のようなものである」。
  • 象の体を触った盲人は、「象とは穀倉のようなものである」。
  • 象の足を触った盲人は、「象とは柱のようなものである」。
  • 象の腱を触った盲人は、「象とは臼のようなものである」。
  • 象の尾を触った盲人は、「象とは杵のようなものである」。
  • 象の尾先の毛を触った盲人は、「象とは箒のようなものである」。

釈迦は、この盲人と象の例を受けて、このように述べた。

"Imesu kira sajjanti eke samaṇabrāhmaṇā,
Viggayha naṃ vivadanti janā ekaṅgadassīno"ti.

ある沙門バラモンらは、まさに、これら(見解)に執着する。
ある一部分のみを見る人たちは、その一部分に執着して論争する。

パータリ村人品

パータリ村において、釈迦は涅槃に関する様々な境地を説いている。

Atti bhikkave, tadāyatanaṃ, yattha neva paṭhavi, na āpo, na tejo, na vāyo, na ākāsānañcāyatanaṃ, na viññānañcāyatanaṃ, na ākiñcaññāyatanaṃ, na nevasaññānāsaññāyatanaṃ, nāyaṃ loko, na paraloko, na ubho candimasuriyā.
Tatrāpāhaṃ bhikkhave, neva āgatiṃ vadāmi, na gatiṃ, na ṭhitiṃ, na cutiṃ, na upapattiṃ. Appatiṭṭhaṃ appavattaṃ anārammaṇamevetaṃ. Esevanto dukkhassā"ti.

比丘たちよ、このような境地がある。そこでは地水火風(=四元)がなく、空無辺処がなく、識無辺処がなく、無所有処がなく、非想非非想処がない。この世でもあの世でもない。月も太陽もない。
比丘たちよ、その境地に対しては、行くことも、戻ることも、住すことも、死ぬことも、再び生まれることもないと私は説く。
それ(涅槃)はまさしく、支えるものも、転起もない、所縁もない。まさにこれが、苦の終焉である。

日本語訳

脚注・出典

  1. ^ 『南伝大蔵経』
  2. ^ a b 原始仏教聖典資料による釈尊伝の研究 - 中央学術研究所

出典

関連項目

  • 小部 (パーリ)
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律蔵(Vinaya Pitaka)

経分別
(Sutta-vibhanga)
大分別
(Mahā-vibhanga)
比丘尼分別
(Bhikkhuni-vibhanga)
犍度
(Khandhaka)
大品
(Mahā-vagga)
  • 1.大犍度
  • 2.薩犍度
  • 3.入雨安居犍度
  • 4.自恣犍度
  • 5.皮革犍度
  • 6.薬犍度
  • 7.迦絺那衣犍度
  • 8.衣犍度
  • 9.瞻波犍度
  • 10.拘睒弥犍度
小品
(Culla-vagga)
  • 1.羯磨犍度
  • 2.別住犍度
  • 3.集犍度
  • 4.滅諍犍度
  • 5.小事犍度
  • 6.臥坐具犍度
  • 7.破僧犍度
  • 8.儀法犍度
  • 9.遮説戒犍度
  • 10.比丘尼犍度
  • 11.五百結集犍度
  • 12.七百結集犍度
附随
(Parivāra)
  • 1.大分別
  • 2.比丘尼分別
  • 3.等起摂頌
  • 4.滅諍分解
  • 5.問犍度章
  • 6.増一法
  • 7.布薩初中後解答章・制戒義利論
  • 8.伽陀集
  • 9.諍事分解
  • 10.別伽陀集
  • 11.呵責品
  • 12.小諍
  • 13.大諍
  • 14.迦絺那衣分解
  • 15.優波離問五法
  • 16.等起
  • 17.第二伽陀集
  • 18.発汗偈
  • 19.五品

経蔵(Sutta Pitaka)

長部
(Dīgha Nikāya)
戒蘊篇
(Sīlakkhandha-vagga)
大篇
(Mahā-vagga)
波梨篇
(Pāthika-vagga)
中部
(Majjhima Nikāya)
根本五十経篇
(Mūla-paṇṇāsa)
根本法門品
師子吼品
譬喩法品
双大品
双小品
中分五十経篇
(Majjhima-paṇṇāsa)
居士品
比丘品
普行者品
王品
婆羅門品
後分五十経篇

(Upari-paṇṇāsa)
天臂品
不断品
空品
分別品
六処品
相応部
(Saṃyutta Nikāya)
有偈篇
(Sagātha-vagga)
因縁篇
(Nidāna-vagga)
蘊篇
(Khandha-vagga)
六処篇
(Saḷāyatana-vagga)
大篇
(Mahā-vagga)
増支部
(Anguttara Nikāya)
一集
  • 1.色等品
  • 2.断蓋品
  • 3.無堪忍品
  • 4.無調品
  • 5.向隠覆品
  • 6.弾指品
  • 7.発精進等品
  • 8.善友等品
  • 9.放逸等品
  • 10.第二放逸等品
  • 11.非法等品
  • 12.無犯等品
  • 13.一人品
  • 14.是第一品
  • 15.無処品
  • 16.一法品
  • 17.浄法品
  • 18.後弾指品
  • 19.身念品
  • 20.不死品
二集
  • 1.科刑罰品
  • 2.諍論品
  • 3.愚人品
  • 4.等心品
  • 5.衆会品
  • 6.人品
  • 7.楽品
  • 8.有品
  • 9.法品
  • 10.愚者品
  • 11.希望品
  • 12.希求品
  • 13.施品
  • 14.覆護品
  • 15.入定品
  • x1.忿略品
  • x2.不善略品
  • x3.律略品
  • x4.貪略品
三集
  • 1.愚人品
  • 2.車匠品
  • 3.人品
  • 4.天使品
  • 5.小品
  • 6.婆羅門品
  • 7.大品
  • 8.阿難品
  • 9.沙門品
  • 10.一掬塩品
  • 11.等覚品
  • 12.悪趣品
  • 13.拘尸那掲羅品
  • 14.戦士品
  • 15.吉祥品
  • 16.裸形品
  • 17.業道略品
  • 18.貪略品
四集
  • 1.班達伽瑪品
  • 2.行品
  • 3.優楼比螺品
  • 4.輪品
  • 5.赤馬品
  • 6.福生品
  • 7.適切業品
  • 8.無戯論品
  • 9.不動品
  • 10.阿修羅品
  • 11.雲品
  • 12.只尸品
  • 13.怖畏品
  • 14.補特伽螺品
  • 15.光品
  • 16.根品
  • 17.行品
  • 18.故思品
  • 19.婆羅門品
  • 20.大品
  • 21.善士品
  • 22.荘飾品
  • 23.妙行品
  • 24.業品
  • 25.犯畏品
  • 26.通慧品
  • 27.業道品
  • 28.貪略品
五集
  • 1.学力品
  • 2.力品
  • 3.五支品
  • 4.沙門品
  • 5.文荼王品
  • 6.蓋品
  • 7.想品
  • 8.戦士品
  • 9.長老品
  • 10.伽倶陀品
  • 11.安穏住品
  • 12.阿那伽頻頭品
  • 13.病品
  • 14.王品
  • 15.底甘陀品
  • 16.妙法品
  • 17.嫌根品
  • 18.優婆塞品
  • 19.阿蘭若品
  • 20.婆羅門品
  • 21.金毗羅品
  • 22.罵詈品
  • 23.長遊行品
  • 24.旧住品
  • 25.悪行品
  • 26.近円品
  • x1.俗略品
  • x2.学処略品
  • x3.貪略品
六集
  • 1.応請品
  • 2.可念品
  • 3.無上品
  • 4.天品
  • 5.曇弥品
  • 6.大品
  • 7.天神品
  • 8.阿羅漢果品
  • 9.清涼品
  • 10.勝利品
  • 11.三法品
  • 12.沙門品
  • 13.貪略品
七集
  • 1.財品
  • 2.随眠品
  • 3.跋耆品
  • 4.天品
  • 5.大供犧品
  • 6.無記品
  • 7.大品
  • 8.律品
  • 9.沙門品
  • 10.応請品
  • 11.貪略品
八集
  • 1.慈品
  • 2.大品
  • 3.居士品
  • 4.布施品
  • 5.布薩品
  • 6.瞿曇弥品
  • 7.地震品
  • 8.双品
  • 9.念品
  • 10.沙門品
  • 11.貪略品
九集
  • 1.等覚品
  • 2.師子吼品
  • 3.有情居品
  • 4.大品
  • 5.沙門品
  • 6.安穏品
  • 7.念処品
  • 8.正勤品
  • 9.神足品
  • 10.貪略品
十集
  • 1.功徳品
  • 2.救護品
  • 3.大品
  • 4.優波離品
  • 5.罵詈品
  • 6.己心品
  • 7.双品
  • 8.願品
  • 9.長老品
  • 10.優婆塞品
  • 11.沙門想品
  • 12.捨法品
  • 13.清浄品
  • 14.善良品
  • 15.聖品
  • 16.人品
  • 17.生聞品
  • 18.善良品
  • 19.聖道品
  • 20.後人品
  • 21.業所生身品
  • 22.沙門品
  • 23.貪略品
十一集
  • 1.依止品
  • 2.憶念品
  • 3.沙門品
  • 4.貪略品
小部
(Khuddaka Nikāya)

論蔵(Abhidhamma Pitaka)

関連文献

註釈
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