ヤム

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ヤム
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: ヤマノイモ目 Dioscoreales
: ヤマノイモ科 Dioscoreaceae
: ヤマノイモ属 Dioscorea
学名
Dioscorea L.
和名
ヤム
英名
yam
ヤムイモを集めるアボリジニの女性を描いた通りのタイル。オーストラリア
Dioscorea sp.

ヤム英語: yam)、ヤムイモヤム芋は、ヤマノイモ目ヤマノイモ科ヤマノイモ属 (Dioscoreaのうち塊根)を食用とする種の総称。ヤマノイモ属には約600種が含まれる[1]が、そのうち塊根を食用とするのは一部である。

名称

学名からディオスコレアともいう。日本では日本原産のヤマノイモD. japonica)が自然薯としてよく知られており、ヤム類を総称してヤマノイモと呼ぶこともある。

産地

9割以上が西アフリカの沿岸部、ギニアサバンナと呼ばれる地域で栽培されている[2]。熱帯アジアラテンアメリカ西インド諸島、オセアニアにかけての広い地域で主食根菜として栽培されている。中国では根の外皮をはぎ乾燥させて漢方の原料にも利用される[3]。地域の伝統的な儀式や祭りの供え物などにも利用される。

ヤムの生産量
(2020年、1万トン)
ナイジェリアの旗 ナイジェリア 5010
ガーナの旗 ガーナ 850
コートジボワールの旗 コートジボワール 770
ベナンの旗 ベナン 320
トーゴの旗 トーゴ 90
 コロンビア 40
世界計 7480
FAO調べ [1]

他の芋との混同

アメリカ合衆国では、オレンジ色のサツマイモがヤムと混同され、頻繁にyamと呼ばれる。ヤム栽培の経験があった西アフリカ出身の奴隷が、ラテンアメリカから北アメリカに導入されていたサツマイモをヤムと呼んだのが原因らしい。さらに1930年代に行われた消費拡大キャンペーンにより、ヤムという誤った通称が定着してしまった[4]アングロアメリカでは、アフリカ系やラテンアメリカ系の食料品店を除けば真のヤムがほとんど流通していないため、ヤムとサツマイモの違いを知る者は稀である。ヤムとサツマイモを両方「Sweet Potato」と呼ぶ人も多い。

スコットランドでは、ジャガイモもヤムと呼ばれる[5]

ユリ目で有毒なアルカロイドを持つグロリオサと地下茎の形状が似ており、誤食による死亡事故が起きている[6]

主な種類

亀甲様の形状が特徴的なキッコウリュウの塊根
  • 成形図説』より
    ダイジョ(ダイショ、ウォーターヤム) D. alata - 熱帯アジア原産
  • ナガイモ(ヤマトイモ、イチョウイモ、チャイニーズヤム、山薬) D. polystachya (D. opposita, D. batatas) - 中国原産
  • カシュウイモ(エアポテト、ポテトヤム、ニガガシュウ) D. bulbifera - アフリカとアジア
  • キイロギニアヤム(キイロヤム) D. cayensis - アフリカ原産
  • ビターヤム(クラスターヤム) D. dumetorum - 西アフリカ原産
  • キッコウリュウ(ツルカメソウ) D. elephantipes - 南アフリカ原産
  • トゲドコロ(トゲイモ、ハリイモ) D. esculenta - 南アジア原産
  • ヤマノイモ(ヤマイモ、ジネンジョ) D. japonica - 日本原産
  • ルソンヤマノイモ D. luzonensis
  • バルバスコ D. mexicana - メキシコ原産
  • シロギニアヤム(シロヤム) D. rotundata - アフリカ原産
  • キールンヤマノイモ D. pseudojaponica - 沖縄県
  • オニドコロ D. tokoro - 日本
  • クシクシ D. trifida - ギニア原産
  • ワイルドヤム(メキシコヤマイモ) D. villosa - メキシコ原産
  • ココヤム(英語版)(ヤウテア、アメリカ里芋) D. xanthosomasagittifolium - 西インド諸島原産

栄養価

ヤム栄養価の代表値

実際の栄養価は、栽培条件、生育環境、収穫時期、品種などで異なるため記載されている値は代表値である。

ヤム、生
100 gあたりの栄養価
エネルギー 494 kJ (118 kcal)
27.88 g
糖類 0.5 g
食物繊維 4.1 g
0.17 g
飽和脂肪酸 0.037 g
一価不飽和 0.006 g
多価不飽和 0.076 g
1.53 g
トリプトファン 0.012 g
トレオニン 0.054 g
イソロイシン 0.052 g
ロイシン 0.096 g
リシン 0.059 g
メチオニン 0.021 g
シスチン 0.019 g
フェニルアラニン 0.071 g
チロシン 0.04 g
バリン 0.062 g
アルギニン 0.127 g
ヒスチジン 0.034 g
アラニン 0.063 g
アスパラギン酸 0.155 g
グルタミン酸 0.181 g
グリシン 0.053 g
プロリン 0.054 g
セリン 0.081 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
7 µg
(1%)
83 µg
0 µg
チアミン (B1)
(10%)
0.112 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.032 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.552 mg
パントテン酸 (B5)
(6%)
0.314 mg
ビタミンB6
(23%)
0.293 mg
葉酸 (B9)
(6%)
23 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(3%)
16.5 mg
ビタミンC
(21%)
17.1 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(2%)
0.35 mg
ビタミンK
(2%)
2.3 µg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
9 mg
カリウム
(17%)
816 mg
カルシウム
(2%)
17 mg
マグネシウム
(6%)
21 mg
リン
(8%)
55 mg
鉄分
(4%)
0.54 mg
亜鉛
(3%)
0.24 mg
マンガン
(19%)
0.397 mg
セレン
(1%)
0.7 µg
他の成分
水分 69.6 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 星川清親『新編食用作物』(訂正第5版)養賢堂、1985年、626頁。ISBN 4842502177。 NCID BN0352695X。https://library.affrc.go.jp/api/QQ20591279 
  2. ^ “541. 西アフリカギニアサバンナの重要作物、ヤムイモの性別とイモ収量の関係を解明 ―効率的な栽培法の開発を目指して― | 国際農研”. 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS (2022年5月22日). 2023年5月24日閲覧。
  3. ^ “「さんやく」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書”. www.weblio.jp. 2023年5月24日閲覧。
  4. ^ Harold McGee『マギー キッチンサイエンス』2008年、共立出版 p.294
  5. ^ リーダーズ英和辞典』初版 (1984)、研究社
  6. ^ 「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:グロリオサ」厚生労働省、2015年4月17日閲覧

関連項目

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、ヤムに関連するメディアおよびカテゴリがあります。
  • 志和地弘信、遠城道雄、林満、「形態的形質およびRAPD法によるヤムイモ (Dioscorea spp.) の種の分類と系統の区分」『熱帯農業』 Vol.44 (2000) No.4 pp.229–237 doi:10.11248/jsta1957.44.229。