カントール分布

カントール分布の累積分布関数

カントール分布(カントールぶんぷ、: Cantor distribution)とは、累積分布関数カントール関数である確率分布のことである。

この分布はルベーグ測度に関して絶対連続ではなく、どのような点質量も持たないため、確率密度関数確率質量関数も存在しない。したがってこの分布は離散確率分布でも絶対連続確率分布でもなく、それらを組み合わせたものでもない。この分布はむしろ特異分布の一例である。

この分布の累積分布関数は、しばしば「悪魔の階段」と呼ばれる。しかしこの用語はより一般的な意味を持つものである。

特徴

カントール分布のカントール集合、つまり(可算個の)集合

C 0 = [ 0 , 1 ] C 1 = [ 0 , 1 3 ] [ 2 3 , 1 ] C 2 = [ 0 , 1 9 ] [ 2 9 , 1 3 ] [ 2 3 , 7 9 ] [ 8 9 , 1 ] C 3 = [ 0 , 1 27 ] [ 2 27 , 1 9 ] [ 2 9 , 7 27 ] [ 8 27 , 1 3 ] [ 2 3 , 19 27 ] [ 20 27 , 7 9 ] [ 8 9 , 25 27 ] [ 26 27 , 1 ] C 4 = {\displaystyle {\begin{aligned}C_{0}=&[0,1]\\C_{1}=&[0,{\tfrac {1}{3}}]\cup [{\tfrac {2}{3}},1]\\C_{2}=&[0,{\tfrac {1}{9}}]\cup [{\tfrac {2}{9}},{\tfrac {1}{3}}]\cup [{\tfrac {2}{3}},{\tfrac {7}{9}}]\cup [{\tfrac {8}{9}},1]\\C_{3}=&[0,{\tfrac {1}{27}}]\cup [{\tfrac {2}{27}},{\tfrac {1}{9}}]\cup [{\tfrac {2}{9}},{\tfrac {7}{27}}]\cup [{\tfrac {8}{27}},{\tfrac {1}{3}}]\cup \\&[{\tfrac {2}{3}},{\tfrac {19}{27}}]\cup [{\tfrac {20}{27}},{\tfrac {7}{9}}]\cup [{\tfrac {8}{9}},{\tfrac {25}{27}}]\cup [{\tfrac {26}{27}},1]\\C_{4}=&\cdots \end{aligned}}}

共通部分である。

カントール分布は、任意の Ct (t ∈ {0, 1, 2, 3, …}) に対して、カントール分布の確率変数を含む Ct 内のある特定の区間が、その 2t 個の各区間の上で恒等的に 2t であるような唯一つの確率分布である。

モーメント

対称性により、この分布を持つ確率変数 X に対して、その期待値E(X) = 1/2 となり、すべての X の奇中心モーメントは 0 であることが簡単に分かる。

分散 var(X) を求める上で、全分散の法則(英語版)を次のように用いることができる。上述の集合 C1 に対して、X ∈ [0, 1/3] であれば Y = 0 とし、X ∈ [2/3, 1] であれば Y = 1 とする。このとき、

var ( X ) = E ( var ( X Y ) ) + var ( E ( X Y ) ) = 1 9 var ( X ) + var { 1 / 6 with probability   1 / 2 5 / 6 with probability   1 / 2 } = 1 9 var ( X ) + 1 9 . {\displaystyle {\begin{aligned}\operatorname {var} (X)&=\operatorname {E} (\operatorname {var} (X\mid Y))+\operatorname {var} (\operatorname {E} (X\mid Y))\\&={\frac {1}{9}}\operatorname {var} (X)+\operatorname {var} \left\{{\begin{matrix}1/6&{\mbox{with probability}}\ 1/2\\5/6&{\mbox{with probability}}\ 1/2\end{matrix}}\right\}\\&={\frac {1}{9}}\operatorname {var} (X)+{\frac {1}{9}}.\end{aligned}}}

が得られる。これより

var ( X ) = 1 8 {\displaystyle \operatorname {var} (X)={\frac {1}{8}}}

が得られる。任意の偶中心モーメント(英語版)に対する閉形式表現は、初めに偶キュムラント[1]

κ 2 n = 2 2 n 1 ( 2 2 n 1 ) B 2 n n ( 3 2 n 1 ) , {\displaystyle \kappa _{2n}={\frac {2^{2n-1}(2^{2n}-1)B_{2n}}{n\,(3^{2n}-1)}},\,\!}

を得、続いてそのキュムラントの関数としてモーメントを表現することで得られる。ここで B2n2n 番目のベルヌーイ数である。

脚注

  • Morrison, Kent (1998年7月23日). “Random Walks with Decreasing Steps” (PDF). Department of Mathematics, California Polytechnic State University. 2007年2月16日閲覧。
離散単変量で
有限台
離散単変量で
無限台
  • ベータ負二項(英語版)
  • ボレル(英語版)
  • コンウェイ–マクスウェル–ポワソン(英語版)
  • 離散位相型(英語版)
  • ドラポルト(英語版)
  • 拡張負二項(英語版)
  • ガウス–クズミン
  • 幾何
  • 対数(英語版)
  • 負の二項
  • 放物フラクタル(英語版)
  • ポワソン
  • スケラム(英語版)
  • ユール–サイモン(英語版)
  • ゼータ(英語版)
連続単変量で
有界区間に台を持つ
  • 逆正弦(英語版)
  • ARGUS(英語版)
  • バルディング–ニコルス(英語版)
  • ベイツ(英語版)
  • ベータ
  • beta rectangular(英語版)
  • アーウィン–ホール(英語版)
  • クマラスワミー(英語版)
  • ロジット-正規(英語版)
  • 非中心ベータ(英語版)
  • raised cosine(英語版)
  • reciprocal(英語版)
  • 三角
  • U-quadratic(英語版)
  • 一様
  • ウィグナー半円
連続単変量で
半無限区間に台を持つ
  • ベニーニ(英語版)
  • ベンクタンダー第一種(英語版)
  • ベンクタンダー第二種(英語版)
  • 第2種ベータ
  • Burr(英語版)
  • カイ二乗
  • カイ(英語版)
  • Dagum(英語版)
  • デービス(英語版)
  • 指数-対数(英語版)
  • アーラン
  • 指数
  • F
  • folded normal(英語版)
  • Flory–Schulz(英語版)
  • フレシェ
  • ガンマ
  • gamma/Gompertz(英語版)
  • 一般逆ガウス(英語版)
  • Gompertz(英語版)
  • half-logistic(英語版)
  • half-normal(英語版)
  • Hotelling's T-squared(英語版)
  • 超アーラン(英語版)
  • 超指数(英語版)
  • hypoexponential(英語版)
  • 逆カイ二乗(英語版)
    • scaled inverse chi-squared(英語版)
  • 逆ガウス
  • 逆ガンマ
  • コルモゴロフ
  • レヴィ
  • 対数コーシー
  • 対数ラプラス(英語版)
  • 対数ロジスティック(英語版)
  • 対数正規
  • ロマックス(英語版)
  • 行列指数(英語版)
  • マクスウェル–ボルツマン
  • マクスウェル–ユットナー(英語版)
  • ミッタク-レフラー(英語版)
  • 仲上(英語版)
  • 非心カイ二乗
  • パレート
  • 位相型(英語版)
  • poly-Weibull(英語版)
  • レイリー
  • relativistic Breit–Wigner(英語版)
  • ライス(英語版)
  • shifted Gompertz(英語版)
  • 切断正規
  • タイプ2ガンベル(英語版)
  • ワイブル
    • 離散ワイブル(英語版)
  • ウィルクスのラムダ(英語版)
連続単変量で
実数直線全体に台を持つ
連続単変量で
タイプの変わる台を持つ
  • 一般極値
  • 一般パレート(英語版)
  • マルチェンコ–パストゥール(英語版)
  • q-指数(英語版)
  • q-ガウス
  • q-ワイブル(英語版)
  • shifted log-logistic(英語版)
  • トゥーキーのラムダ(英語版)
混連続-離散単変量
  • rectified Gaussian(英語版)
多変量 (結合)
【離散】
エウェンズ(英語版)
多項
ディリクレ多項(英語版)
負多項(英語版)
【連続】
ディリクレ
一般ディリクレ(英語版)
多変量正規
多変量安定(英語版)
多変量 t(英語版)
正規逆ガンマ(英語版)
正規ガンマ(英語版)
行列値
逆行列ガンマ(英語版)
逆ウィッシャート(英語版)
行列正規(英語版)
行列 t(英語版)
行列ガンマ(英語版)
正規逆ウィッシャート(英語版)
正規ウィッシャート(英語版)
ウィッシャート
方向
【単変量 (円周) 方向
円周一様(英語版)
単変数フォン・ミーゼス
wrapped 正規(英語版)
wrapped コーシー(英語版)
wrapped 指数(英語版)
wrapped 非対称ラプラス(英語版)
wrapped レヴィ(英語版)
【二変量 (球面)】
ケント(英語版)
【二変量 (トロイダル)】
二変数フォン・ミーゼス(英語版)
【多変量】
フォン・ミーゼス–フィッシャー(英語版)
ビンガム(英語版)
退化特異
【退化】
ディラックのデルタ関数
【特異】
カントール
  • 円周(英語版)
  • 混合ポワソン(英語版)
  • 楕円(英語版)
  • 指数
  • 自然指数(英語版)
  • 位置尺度(英語版)
  • 最大エントロピー(英語版)
  • 混合(英語版)
  • ピアソン(英語版)
  • トウィーディ(英語版)
  • wrapped(英語版)
サンプリング法(英語版)
  • 一覧記事 一覧(英語版)
  • カテゴリ カテゴリ